Coldcut (The Sage, Gateshead)

イングランド北部最大級の町ニューカッスルはタイン川という川沿いにあって、正式にはNewcastle upon Tyneというそうです。タイン川をはさんで北側にニューカッスル、南側にゲイツヘッドという町が広がり、大小さまざまな橋がかかっています。
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London King’s Crossから3時間半くらい
町の中心部から地下鉄で30分ほど行くだけで北海に出られる位置関係で、大きな川と海とが時間をおだやかにしています。炭鉱と造船と重工業な古い町が新しくなろうとしている最中、という感じでしょうか。北海はちょっと荒っぽかったけど、肌寒さと人々の表情とにいい雰囲気を感じます。
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スチーブンソンさん(たぶん)もニューカッスル・ユナイテッドを応援しておいでです
この地を訪れたのは、シアラー御大やオーウェンのプレーを見たいからというわけではなくて、ゲイツヘッドにあるThe Sageに行くためでした。アルバムSound Mirrorsをリリースしてツアー中なColdcutのギグがここで行われます。
The Sageはかなり面白い造形をしています。新しく生まれ変わろうとしているこの地域のランドマークのひとつとして、足元にはレモンを縦に4分の1カットした(あるいは弦のないハープの)ような形のミレニアム・ブリッジがあり、かなり遠くからでも目立ちます。そもそもレンガ主体の色合いの町でシルバーな外壁は相当目立つのですが、跳ね橋でこの形というのは相当面白い発想です。
The Sageはどうにもすばらしい施設でした。英国産のThe WIREという音楽雑誌があるのですが、この内容をそのまま施設にしたような印象です。クラシカルなシンフォニーからDJセットまでなんでも受け入れつつ、「音楽」というキーワードで結ばれる磁場になっていて、ハイプや産業の香りはせず、楽しみ考える対象としての音楽を広くとらえている感じ。施設内にある書庫には、サウンドカードと鍵盤が接続されたPCが並んでます。ここで聴いた中で一番気に入ったのはこれ。マリのミュージシャンらしいです。

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1度訪れただけで判断するわけにもいきませんが、ハコモノ行政な中身スカスカ感もなく、書庫のアーカイブもイベントのスケジュールも充実しているように見えました。ここの書庫自体はそれほどの規模ではないのですが、どれそれはどこの図書館にある、このCDは市内の何とかというショップで買える、といったリファレンスがしっかりしています。こういう施設が日本にもあるといいなあと思いましたが、それこそできた瞬間にハコモノ行政なスカスカ感が漂う恐れもあるのが悩ましいところ。
「Coldcutのギグは中にある一番小さいホールで”Club Style”だよ」と教えてもらいながらオープンを待っていると、隣の大きなホールにぞろぞろと人が。家族連れも結構いるし年齢層もバラバラで、いったい誰?とおもったらErasureでした。Depeche Modeだったらもうちょっとスカした感じの客層になるんだろうか、それともイングランド的にポップミュージックはそういう位置づけなんだろうか、などと異常におっさんくさいポスターなどを眺めつつ考えていました。
で、Coldcut。あれこれと予測はしていなかったのですが、ここまで面白いショウは久しぶりでした。えらく横に長いセットだなあ、と思ってたら計4名が機材群とコード束の背後に並びます。ああ、Coldcutはビジュアルも音楽と同期させてExpressする人たちなんですね。音に合わせてビジュアルもスクラッチされまくり。ビデオカメラで撮った映像をリアルタイムで画面に素材として流す、なんてお約束(これはU2がずっと前にやってますね)もまじえつつ。曲ごとにゲストボーカルが出てくるわ、よりによって”Everything Is Under Control”というタイトルの曲の最中にシーケンスが暴走して演奏を一度中断、マット・ブラックがリズムマシンのパッドを叩いてビートを刻みつつ(手で!)、即席な”What You See Is What You Hear”のライムで復旧まで場つなぎをするという微笑ましいところまで盛りだくさん。

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どたばたしつつもオーディエンスのノリもよく、かなり盛り上がりました。こういう感じって日本ではあんまり体験できないなーと「来てよかったな感」でいっぱいになりながら、4月でもやっぱりクソ寒い夜道を帰ろうと歩いていたら、あんちゃん2人に話しかけられました。以下、再現。

「おい、お前Coldcut見たのか?」
「はい そうです」
「俺はPAやってるピーターってんだ」
「本当ですか それは?」
「ああ!どうだった?」
「とても 最高 私 おもいます よかった 訪問して 私」
「ん?おまえどっから来たの?」
「日本からです」
「おお、ホリデイか!な!マッドで最高だったろ?このノリをさ、お前の国でも広めてくれよ!」
「もちろんです! 私 思います また 見たいです 楽しみです 私」

スタッフにとっても結構よいセットだったようで、彼らもかなりホクホクしていて、握手した手にキスされるわハグされるわの歓待を受けました。ちょうど金曜日の夜だったこともあって結構な賑わいの中、ニューカッスルの坂道を登ったり降りたりしながら帰路についたのでした。
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右下がゲイツヘッド、左下がセントラルステーション、左上がセント・ジェームズ・パークです

One Response

  1. argentina78 2006/04/29 at 11:27 PM |

    面白いぞ!その調子だ。

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