24 Hour Party People (Manchester)

こんなWeb広告のバナーがあります。
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これ、たぶん週代わりなんでしょうが、その週にマンチェスターで行われるイベントを集めているバナーで、マンチェスターのホテルや交通機関などのサイトによくはってあります。チェルシー – リバプールのゲームや、シャーラタンズのライブが予定されてるわけですね。チェルシー – リバプール?と疑問に思いつつも、ともあれニューカッスルからマンチェスターへ向かうことにします。
さて、問題は経路です。
利便性からいうとロンドン方面にヨークまで南下してから西に向かうのがよいようですが、ニューカッスルからであればまず西のカーライルへ行って、そこから湖水地方を通ってリバプール側から向かったり、ヨークシャーデイルズという国立公園地域を南東にリーズまで下ったり、もっというとスコットランドへ入ってエディンバラ – グラスゴーを経由してカーライルへ向かったり、いろいろ選択肢があるようです。つまり、四角形の右上(ニューカッスル)と左下(マンチェスター)の配置で、まっすぐ結ぶ対角線がないという構造。
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当たり前ですが、わからない地名が多い
ただ、運行状況が日本ほどパンクチュアルではないのがこちらの鉄道の悩ましいところ。いわく、大きな鉄道事故があってから安全第一になっているそうで、遅れる止まるはよくある話。20いくつだかって数の分割民営会社が相互に乗り入れていて、正直ぱっと見にはわけわかりません。あちこちに「安定運行したいけどなかなかそうもいかないから余裕を持ってね」という意味の注意書きがあるし、書店で「Train Times」のような類を探すと厚さ15センチくらいのしかないという。おまけに週末は劇的にダイヤが変わるので、1か所でなんか起きたらえらいことになりかねません。処々の行程と駅においてある各路線ごとの薄い時刻表をにらみながら、結局直球なManchester Airport行きに乗り、あまり複雑なことはしないことにしました。
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時刻表の数々(全部別の会社)
さてまず南下。している途中で、明らかに周囲に何もない、芝と羊と馬と牛な平原にぽつんとある駅に止まりました。長距離列車はある程度の規模の町にしか止まらないはずなので、早速なんかあったのだろうかと緊張していると、列車を降りたおっさんたちがプラットフォームに集まっています。手には一様に新聞、馬の写真。ああ、なるほど。そういえばそれも英国文化ですね。おっさんたちの雰囲気は大井や川崎のそれに近い二の腕太い系でした。
列車はヨークから西へ向かいますが、徐々に混み始めます。このあたりだと週末遊びに出かけるっていうとロンドンよりもマンチェスターの方が行きやすいのかなあ、などと考えていると、リーズで一気に満員に。しかも一様に客層が若い。隣に座った兄ちゃんはたくさんの新聞を抱え、ひっきりなしに携帯で話してます。

「ああ、列車の中だよ。おまえはどこにいるんだ?」
「そうか、じゃあスポーツバーにしようぜ」
「あ?どこそこにあんだろスポーツバーがよ」
「そうそう」

そうか、FAカップの試合か、リーズの人といったってリバプールのファンもいるよなー、と当たり前のことにいまさら気づきました。よりによってチェルシー – リバプールがオールド・トラッフォードで開催されるのがアレですが、FAカップは一発勝負のはずなので、各試合の開催スタジアムは最初から決まってるんでしょう。
そしてManchester Piccadilly。ロンドン、ニューカッスルとは雰囲気が全然違います。駅舎も新しく、ガラスを全面に使ったアパートが周囲にたくさん建ってて、なんだかとても近未来。黄色の蛍光ベストな警官がたくさんいます。町中いたるところにあるスポーツバー(要は有料テレビのフットボール中継を大画面で放送するパブ)にはかならずセキュリティがいて、Over 21 for Off Licenseかどうか(Off License=酒)、どこのサポーターかを確認しています。たしかに試合日でもありますが、基本的にいつもそういう町のようです。
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非常に明るいManchester Piccadilly
チェックインの前に休んでいると、野太い歌声が遠くから聞こえます。周囲もざわざわし始めたところに、ロンドンからやってきたらしい青色ユニフォームの集団が登場。チェックインに並んでいても、後ろのゴルフ帰り(想像)紳士2人組が脇においてあるテレビに一喜一憂。反応をうかがっているとアーセナルサポーターの様子。そういえば今日のスパーズ戦は来期チャンピオンズリーグ圏の直接対決のはずです。「俺のボスがスパーズファンなんだよ」なんて会話にそれは大変だなあと思っていると、最近のレーマンの覚醒っぷりもちゃんと話題になってて、万国共通。
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なんとまあファイナンス部門まであるようです
マンチェスターといえば、私の青春のBGM(まあ今もですが)の音楽をたくさん生産している町でもあります。ただ、うすうす気づいてましたが為替的な体感の物価高は音楽も例外ではなくて、たとえばCDは日本で買った方がたいてい安くできそうです。ファクトリーやハシェンダがストレートな憧れだった時代は私的にも世間的にももう終わっているので、ここでは町歩きとオールド・トラッフォード詣でにとどめることにしました。このサーバーのドメイン名の由来でもある、”Fine Time” な駐車違反の反則切符もこの町で切られたのかしら(本当は違うんですが)、などと感傷に浸りつつリバプールも含めてふらふら歩き回ってみました。
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マンチェスター – リバプール間にある火力発電所(らしきもの)
結局マンチェスターでは2晩過ごしましたが、どこへ行っても夜ごと叫んでいる連中続出。うるせーやつらだなあまったく、と温かく見守るくらいの器量がこの町では必要なのでしょう。映画『24 Hour Party People』そのままで、笑ってしまいました。